E X P L O S I O N


「へい財前くん」
「なんすか」
「きみはこの状況をどう捉える?」
「そらもう、なんやうざいくらいテンションたっかい先輩がやっほー!とか言うて部室ん中でいきなり変な動きしよっていろんなとこにぶつかったせいで部長の大事に育てとった鉢植えが棚から落ちて割れ、床におった謙也さんのイグアナがその下敷きになって意識不明、机においてあった金太郎の食べかけのたこ焼きがごろごろころがって同じく机の上の小春さんがこないだ買ってきたナース服にソースがべったり付着、そしてソファで寝とった千歳先輩を一部始終を目撃したっちゅー理由で先輩が殴って気絶させ、今に至るって感じっすかね」





「…財前くんはオブラートに包むという言葉をしらないのか」
「しらないです」
「さらにいうならばやさしさというものもしらないのか」
「しりません」
「ちょっともうどうしよう!!!わたしぜっっったい怒られるみんなにしばかれる」
「でしょうね」
「どうしよう!!財前くんどうしよう!!」
「そんなん俺に言われても」
「あ、そういえば今日ね、謙也が『なんであいつはあんな愛想ないのにもてるんや!俺なんか年中にっこにこしてんのに!!』って言ってたよ」
「あいつって俺っすか」
「うんそう」
「ハッ」
「(鼻で笑った…)(謙也どんまい)」
「あの人いつもそんなんばっか言うてるんすか?」
「うん。たいがいそんな話」
「しょーもな」
「謙也はだいたいそんな感じだもん。しょうがないよ」
「それなんですかフォロー?」
「うん」
「あっそ…つかなんで先輩その話を今。現実逃避しとるん?」
「現実…なにそれ美味しいの?」
「美味しかったんちゃいます?金太郎のたこ焼きはさぞ」
「う…!なんか今見たくないビジョンが…!」
「食いもん絡むとあいつめんどいやろなあ」
「それはもう…重々承知しております…」
「ま、俺は関係ないんで」
「もうなんか涙出てきた…」
先輩、こういうんなんて言うんか知ってます?」
「うう…なんですか…」
「自業自得。」
「ざっ…財前くんの鬼!!!」


(がちゃり)
「だーれが鬼やってー?って…  ん?」
「!!!!ああああのしらいし、これはその」
「おーい白石ーこのメニューなんやけ、 どおおおお!?」
「けけけけけけけんや」
「……」
「おお!おれの!いい、いぐあなが!!!ぐったり!!ぐったりしとる!!」
「あのこれは誤解っていうかなんていうか」
「うわっしかも千歳はしんどる!!!」
「しんでないよ!!生きてるよ!!」
「…へえ。まったく…はあかん子やなあ。命粗末にしたらあかんて親御さんに習わんかったん…?」
「!!!! (こここここころされる!!!!!)」


※その後続々と部室にやってきては激怒必至だったレギュラー陣にさんざん罵詈雑言を浴びせられ、最終的に先輩は冷たい床の上に土下座させられていた。いつ付着したのかそのほっぺたにはたこ焼きのソースがべったりくっついており(おそらくユウジさんが小春さんのナース服をつきつけて文句を言っていたとき)、それをなめた金太郎が部長にどやされていた。俺はというと、一部始終の間すみっこでまだ意識を回復しない千歳さんをうちわでぱたぱた扇ぎながら事の顛末を傍観していた。(銀さんにそうしてやれって言われたから、仕方なく)(千歳さんはうんともすんとも言わなかった)





「はあ…」
「散々でしたね。まあ因果応報やけど」
「あれ、財前くんまだいたの?みんなもう帰っちゃったよ」
「だって千歳さん起きひんから」
「…なにそれ。なにそのやさしい理由。財前くんぽくないね」
「ちゃいます。千歳さんにCD借りる約束しとったし、ついで」
「ふうん。ついでかあ」
「ついでです」
「やさしんだね財前くんは」
「人の話聞いてます?」
「うーんあんまり…足しびれちゃって」
「土下座で?」
「うんそう土下座で」
「先輩たち許してくれました?」
「謙也と金ちゃんはアイスおごるって言ったら即オッケーだった」
「ふーん」
「でもあのえくすたしーとユウジの野郎が…」
「ああ…ユウジ先輩ぎゃんぎゃん言うてましたね」
「そうなの!ユウジは本気で怒ってた!でも白石は最後の方楽しんでたんだよ…あの変態野郎」
「へえ」





「そういや、なんであんなに喜んでたんすか?」
「え?」
「やっほー!言うてたやないですか」
「あーあれね…」
「そう」
「合宿のバス、わたしが財前くんの隣の席だって、今朝白石から言われてさ…」

「(ぽかん)」
「…あっ!?いや、いやいやいや!ななななんでもない!今の忘れて!なし!今のなし!!」
「……」
「…財前くん?」
「(ハッ) …いや、はい」
「うん」

「… 俺、そろそろ、帰ります」
「え、あ、うん…」
「先輩は?」
「あ、わたしも…帰る…」

「(びっくりした…)」
「(やっちゃった…)」


※この後、俺と先輩は未だ目を覚まさない千歳先輩を置き去りにしていっしょに部室を出た。バスの席、隣なんですかと聞くと真っ赤な顔をした先輩が「トトトトランプ!!いっしょにやろうね!!」と半ば叫ぶように言ったので、俺はもう、黙ってこくんと頷くしかなかった。
(その顔がちょっとだけ可愛いかったので、仕方なく)



ぱちん、ぱちん
( な に か が は じ け た )