…★ミ あんな顔してあんな服着てあんな殻かぶってるくせにいちいち細かいよねとかうるさいよねとか繊細だよねとか顔に似合わないA型っていうのがいちばんむかつくよねとか、ジョルノとふたりでアバッキオの悪口を言いながら表通りを歩いていたらひとりでカフェテラスにいる可哀そうなアバッキオを見つけた。隣を歩くジョルノが「無視しましょう」と言ったときすでにわたしは左手をぶんぶん振ってアバッキオー!と大声を上げてしまっていたからジョルノに「ごめん」と謝った。ジョルノは肩をすくめた。 「おい、みっともない真似してんじゃねーよ」 「ねえねえアバッキオなにしてんの」 「見りゃわかるだろランチだよ」 「ねえねえアバッキオ」 「なんだよ」 「いっしょにランチする友達もいないの」 「おいおい俺はギャングだぜ」 「ふーん」 「はあ、まったくつまらない返しですね。行きましょう、これよりミスタで遊ぶ方がなんぼかマシだ」 「おいコラジョルノこれって誰のことだ言ってみろ」 わざとらしくため息をつくジョルノにすでに臨戦態勢のアバッキオが声を低くする。このふたり、普段からあまり仲がよろしくないのでパリパリと火花みたいなものが飛び散る展開になるかと思い少しヒヤヒヤしたけれど実際はただアバッキオがジョルノをガツンとにらみつけているだけでジョルノの方は完全無視だったのでノンチェプロブレーマだった。それどころか涼しい顔で「わんちゃん可愛いな」などと言いながら散歩中のマルチーズを眺めている。まあいつものことである。でもわんちゃん可愛いとかぜったい本気で思ってないだろマルチーズに謝れよ。 「、僕は腹が減りました。アバッキオに付き合ってないで早くどこかのカフェに入りましょう」 「え?ここでいいじゃん」 「この僕にアバッキオの隣のテーブルで食事をしろと?」 「あ、そっか… ごめん」 「てめえ何謝ってんだ。つーかお前らこそ二人で何してたんだよ」 「なんです、嫉妬ですか?まったく器の小さい男はこれだからもう」 「は?何言ってんだお前」 「えっアバッキオってジョルノのこと好きだったの?」 「お前も何言ってんだよ」 「アバッキオ…?」 「おい!青ざめた顔で距離とってんじゃねえよ!」 「まあ薄々、そんな気はしてましたけどね…」 「そうだったんだ…ごめんねジョルノ、今まで気づいてあげられなくて… ずっとひとりで悩んでたんだね」 「が気に病む必要はありませんよ。僕が我慢していれば済むことですから…」 「おねがい、おねがいだからジョルノ、ひとりで悩まないで…!」 「…!」 キラキラという効果音が飛びそうなほど熱烈に見つめ合うわたしたち。つまりアバッキオのつっこみ待ちをしていたはずなのたが当の本人は途中から飽きてしまっていたようでわたしとジョルノの心温まるハートフルな演技をろくすっぽ見ていなかったみたいだった。新聞を片手にコーヒーをすすりながら「おいもう終わったのか?」などと言いやがる。相変わらずノリが悪いやつだよまったくもう。チッと舌打ちしたジョルノがガバリと抱きついてきたのでよしよしと背中をさすってあげていると「おい、ケーキでも食うか?おごってやるよ」とドルチェのメニューを開いているアバッキオの姿が見えた。神様かよ。 「アバッキオ大好き!!!」 「よし。好きなの選べ」 「買収ですか?汚いですよアバッキオ」 「お前に一番言われたくねえよ」 「ジョルノどれにする?」 「僕はなんでもいいですよ。プリンあります?」 「それなんでもよくないよね。プリンあるよ!」 「御馳走様ですアバッキオ」 ジョルノてめえ何ほざいてんだお前におごってやるとは言ってねえとこれまたつまらない普通の返しがアバッキオの口から飛び出そうとしたまさにそのタイミングでジョルノがウエイターを呼んだ。のでアバッキオは口をつぐむはめになった。その煮え切らない顔が面白くてわたしはお腹を抱えて笑ってしまったしジョルノはジョルノでプリンにご満悦で「おだやかな気分です」と言って笑うしアバッキオは苦い顔をしているけど口は悪くても実はすごく善人で良い人だってこと、ジョルノもわたしも知っているからなんだかんだやっぱりアバッキオのこと好きだなって思った。悪口言ってごめんねって思った。ジョルノも同じ気持ちだよねと同意を求めたらジョルノは「善人と良い人ってどちらも同じ意味ですよ。まったくは本当に脳みそが可愛いですね」と言って腹が立つくらい美しく微笑んだので、パッショーネは今日も平和です。 |